XC02120238

コロナ禍の東京五輪はいかに語られたか : テレビニュースのキャスターコメント分析から

Media Coverage of the 2020 Tokyo Olympics: Analysis of Broadcast Comments on TV News during the Covid-19 pandemic

駒澤社会学研究58

駒澤大学文学部社会学科

2022-03

27

54

03899918

日本語

AN00093370

departmental bulletin paper

P

本稿では、コロナ禍で開かれた2020東京五輪のマス・メディアの報道に焦点を当てる。とりわけ、ニュースキャスターのコメントに注目して彼／彼女らがどのような言葉を用いてコロナ禍の五輪を表現したのかを明らかにする。開催時期は、感染状況が深刻度を増していた頃であり、コロナの世界と五輪の世界がパラレルに存在した（山腰，2021）。山腰はこの時期のメディアの報道姿勢は五輪の世界に傾き、十分にコロナの実情を報道しきれていなかったと批判する。本稿では、この考え方を援用し、実際にキャスターがいかに語ったのかを国内の主要ニュースを分析することで明らかにする。その際の分析枠組みは感情労働であり、キャスターがどのような認識枠組みを感情規則として内面化し、語っていたのかを探る。この時期、連日過去最多の感染者を記録するなか、五輪をにこやかに伝えるキャスターには「二枚舌」「手のひら返し」などと批判が浴びせられた。分析を通して、世論を敏感に感じ取ったキャスターが開会前までは国民の不安を代弁し、政府に適切な対応を要求していたものの、開会後は、メダルラッシュのなかで従来どおりの感動の物語を伝え、選手の応援団と化していたことが明らかになった。今回の五輪ではコロナ禍という特殊事情があったからこそ「共感」重視に拍車がかかり、キャスターは選手から聞かれた開催への「感謝」の言葉に寄り添って人々の共感を誘い、一体感を醸成する役割を果たしたといえよう。

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